緋忍伝-呀宇種(ガウス)

第三回「希望への脱出」
前へ
_1_ _2_ _3_ _4_
 構 成: たかおかよしお
 脚 本: 神原正夫
「ぁあっ、んっ……ふんっ…………んっ!」
「ふふ……、鼻に掛かった声が出始めたではないか?」
さっきまではただ捕まっていただけなのに、今の楓は百々目に抱き寄せられるように立っていた。その姿は自分から寄り添っていったようにも見える。
だがそれだけでなく、自らの体を擦り寄せて、女の性に悶えながら百々目を誘っているかのようだった。
ここから初めて見た者は、先程まで互いに倒そうと、刃を交えていた二人とはとても思えないだろう。
「くはっ…………んぁぁっ、あぁっ……んっっ……」
楓の頬は朱に染まり、目つきが酔ったようにトロンとしている。
「これ程間近で見たのだ、かなりの効き目であろう」
百々目の言葉が聞こえているのかいないのか、次第に息も早くなり、衣服で整えられた形のいい胸が、吐息に合わせて上下している。
「ふふっ、苦しかろう」
「ぁあっ…………、はぃっ……」
百々目は掴んでいた楓の腕を放す。それなのに楓は百々目の側を離れようとはしなかった。
「であれば、自らその襟を開けるがよい」
「…………は、ぁいっ」
百々目の言われるまま、楓は自分の衣服の襟元を開く。
「駄目よ、おやめなさいっ楓!」
しかし紅蘭麻の声は届かず、楓は重ね着の襦袢も一緒に、両手で一気に胸を開く。するとプルンと勢いよく、瑞々しい双丘が現れる。既にほんのりと茜色に色付き、一層張りも出ていた。まさに熟れて食べ頃になっている果実と言っていい。
「女の性に目覚めておらぬ未通娘の姫には有効ではないが、かような熟れた女には苦痛よりも、むしろ邪淫を引き出した方が確実で早いのだ」
満足げに笑う百々目。邪眼ではなく通常の目がスッと細くなる。
そんな百々目の冷酷な微笑と、淫靡な色香の浮き出た楓の不似合いさに、紅蘭麻は思わず目を背けてしまう。
「くっ、私が足手纏いにならなければ……、楓」
「ははは……待ちきれぬのか。自分で弄りだしたわ」
楓はとうとう己の乳房を弄り始めた。左右の膨らみを左右の手で、斜め下から持ち上げると、そのまま左右対称の運動をし始める。
「んぁっ…………んっ……」
ふにふにと弾力ある感触を自分で楽しんでいる様で、十本の指の力を加減しながら、自由に形を変化させている。
だがただ二カ所だけが、他の柔らかい部分に反してツンと固くなり始める。その頂点が突起していく様は、離れていた紅蘭麻の目にもしっかりと映っている。
「ぁぁあっっ……楓」
紅蘭麻は自分があの邪眼を受けた事を思い出した。つい先刻の事なのに忘れていた感覚と、そこから呼び覚まされる記憶が、生々しく思い出されていく。
その為、自然と自分の下腹も熱くなってくる。しかしそれと同時に、卑猥な拷問器具に座らせた事も思い出される為に、ズキズキと裂ける様な痛みも感じきてしまった。
「も、もうだめ……見ていられない」
そう言って顔を覆い隠すが、何故か指の間を空けて、自分の為に闘ってくれていたはずの仲間の痴態を見続けてしまう。
「くふんっ……」
楓の双丘の突起に百々目の指が触れる。その感覚にビクンと楓の体が反応する。
「ふっ……、自分の主人の事も忘れ、快楽にふけるか」
紅蘭麻の方を見向きもせず、百々目の顔をチラリと見た楓は、両方の乳首を指で挟み、今度はその突起を重点に弄り始める。
「ふくぁぁっっっ! んんひっ!!」
それを見て百々目も楓の片方の乳房を掴み、伸びきるまで引っ張ったり、先端を埋没する程押し込んだりを繰り返して、その感触を楽しんでいる。
もう片方の乳房は、楓自身が人差し指と親指とでしっかりと挟んだり、中指と小指のように、力の入りにくい指で挟んだりして、そのもどかしさを味わっているようだ。
左右の乳房は対照ではなく、二人の欲望と快楽のままに、好き勝手に弄ばれていた。
「んっ…………をほっ! くんっ!」
百々目は楓のアゴを上げさせる。
楓の顔は乳房への刺激だけで、この上もない恍惚とした表情に変わり、高みに登っていくのが垣間見える。そして下では、太股も摺り合わせ始めていた。裾の短い着物なので、少しでも高く動かすと、刷り上がって脚の付け根まで見えてしまいそうである。
「ぬっ。こやつ……」
そして開いていた片手を百々目の脚に伸ばしてきた。袴の上を這いずり回る様に滑らせ、両脚の間へと動いていく。
「ぁああっんっ…………んっ、ふっ……っうんんっ……」
楓は今まで以上に体を密着させ、物欲しそうな目つきで百々目を見上げる。そして片手で乳房を揉みし抱きながら、もう片方の手で百々目の股間を弄っている。まるで恋人同士がいちゃついている姿そのものだ。
楓の手は、やがて半分ほど硬直し始めた百々目のモノを探り当てると、手で包んで擦るように盛んに動かす。
「ふっ……、とても我慢出来ぬと見えぬな」
百々目の口橋が歪む。
「楓、お願いです……、やめて、お止めなさい……」
紅蘭麻も楓の行いが信じられなかった。あれほど頼もしく思っていた楓が、こんな淫靡な格好で、しかも敵の一人に迫る姿など見たくはなかった。
(けど……わたし、私も先ほど……あのようになっていたのかも……)
そして紅蘭麻は、先ほど捕まっていた事も思い出してしまう。自分の体も火照ってしまうようだった。その証拠にぎゅっと握った掌には、ずっと汗を掻いている。
「ぁふぁぁんっっ…………、こ、これを…………んっ」
楓は相変わらず次の行為へと百々目を誘っているようだった。
もう以前の楓には戻る事が出来ないのか?
最悪の結果まで紅蘭麻の考えに浮かんでしまう。


「ゲパ~~~~ッッ!!」
その時、天守の方から悲鳴が聞こえた。
紅蘭麻はふと我に返り、天守の方を見てその声の主を探す。だがここからは天守の影になっているようで、どのような状況なのかわからなかった。
「あの声……オガル!?」
しかし、確信を持ってその声の主の名を呟く。
向こうも片付いたと思い、卑屈にほくそ笑む百々目。騒ぎが収まった事よりも、自身もしっかりと手柄を得て、仲間の中で遅れを取る事が無かった事に喜んでいるようだ。
百々目は更に先の事を考えていた。この後は女体を存分に楽しむ事が出来る。それも巫女の護り部という極上の素材を。そう思うと一層下半身が固くなる。
「ははは……、巫女の護り部など、六道衆に掛かればただの道化に過ぎぬ」
「そうかも知れないわね?」
ふいに胸元から声がかかる。ギョッとして顔を向けると、楓が余裕の微笑みで見上げていた。
「なにっ!? まさか……ぐはっっ!!」
邪眼の術にかかっていたはず。と驚く百々目だが、その隙に自分のイチモツをしっかりと掴まれてしまっていた。
楓の片手はまだ自分の胸を掴んでいたが、その乳房の乳頭は、百々目に見せつけるように、こっちを向いていた。
「忍法!  乳 ( ちち ) 変化 ( へんげ ) !」
その瞬間、楓自らが揉みしだいた乳房から毒液が噴出し、百々目の邪眼に向けて発射された。
「ぐっ……ぎぁああっ!!!」
乳白色の液体が突然顔面を襲う。イチモツを掴まれていたので、至近距離からもろにその液体を浴びてしまった。
悲鳴を上げた百々目の股間から、楓は手を離す。
慌てて腰を引いて俯き、額を抑えて苦しむ百々目。
「楓! ど、どうなったのです!?」
紅蘭麻にはまだ状況が理解出来ていなかった。
楓は邪眼の術に掛かっているふりをして、自らの術中に嵌るように仕掛けたのだった。百々目は通常の眼まで毒液を喰らったらしく、顔半分を抑えて苦しんでいる。
「な……何故だ……、わ、わたしの術が……利かぬ者など…………」
「ふふふ……、そういう時もあるという事ね」
言いながら乳房を拭き取り、楓は百々目との間合いを取る。そして片手に残った感触を思い出しつつ呟いた。
「味わい損なったのかもしれませんねぇ」
「おのれ!」
百々目は三つの目の位置を片手で押さえながら、剣を抜き振り回す。しかし冷静さを失った闇雲な攻撃が、手練れである楓に当るはずがなかった。
「しばらくそうしておいで」
所がそれを聞いて、百々目は刀を放り投げた。当てずっぽうに投げたと思われたその行動に、楓が気付いて声を上げる。
「しまった!」
その刀は剣先を向けて、正確に紅蘭麻のいる位置に飛んでいった。楓にはそれを阻止しようと腰に手を伸ばすが、いつもの小刀がそこには無かった。
「しまった!!」
「あ……っ!」
紅蘭麻は突然の危機に、恐怖の表情を浮かべる事しか出来なかった。拷問による傷が癒えていないばかりか、硬直して動けないのだ。やむなく当ると思った瞬間に目を閉じてしまう。

「姫様!!」
「くっ……!」
しかし、ガキッと金属的な音が響いただけで、その刀による傷は、紅蘭麻には何一つ付く事が無かった。
「姫様、間におうたで!」
聞いた事のある声に、恐る恐る紅蘭麻が目を開ける。すると 廓 ( くるわ ) の上に桃花がおり、その手には彼女の得意の獲物である鎖鎌が握られていた。鎖は紅蘭麻の近くまで伸びていて、百々目の放った短刀を絡め落とす事に成功したのだった。
「桃花! 来てくれたのですね!」
「どや! ええ場面に来たやろ?」
「遅い桃花!」
「ええ~、そんな事無いやんか?」
パッと表情が明るくなる紅蘭麻に、得意げな表情で答える桃花だったが、楓に怒られて拗ねた顔に替わる。三者三様の表情が交差した。
「ぅううっ……、し、しくじったか!?」
音と気配で伝わる状況から、賭が失敗した事を知った百々目は、ふら付きながらもその場を退散していく。
「今や! 止めをさせば終わりやで!」
そう言って桃花は、途中で拾った楓の小刀を投げてよこす。
「放っておきなさい。今は姫様を連れて逃げる事が先決です!」
小刀を受け取った楓だが、自分の衣服を正しつつ、何より先に紅蘭麻に駆け寄って助け起こす。
「楓、一事はどうなる事かと」
「ご心配をお掛けしました姫様」
楓と姫のやりとりと、百々目が消え去った方を見比べる桃花。
「ふん。命拾いしたやんか」
桃花はつまらなさそうな顔をしたが、すぐに鎖鎌をまとめながら、同じく紅蘭麻に駆け寄る。
「姫様~!」
「ありがとう桃花」


二人に助けられた紅蘭麻は、本来は自分の住居である月影の館を脱出していく。もちろん悠長に門から出られる訳無いので、二人に抱えられ塀を飛び越え、そして堀を渡って走っていった。
一旦森に入り小休止のつもりで身を潜める。どうやら追っ手はまだ来ないようだ。
そこで桃花は持って来た薬を紅蘭麻に差し出す。紅蘭麻は恥ずかしながらもその薬を股間や縄の跡に付けてみる。すると痛みが取れてずいぶんと楽になった。これなら二人に肩を借りなくても、人並みに走る事が出来る。
そして同じく持って来て貰った衣服を身に着けながら、悲鳴が聞こえたはずのオガルの事を思い出して気にかける。
「そう言えばオガルはどうしたのです? あの叫び声はオガルのものではありませんでしたか?」
「姫様ご心配なきよう、あれは囮、演技です。オガルはちょっとやそっとの刀傷は効かないのです」
心配を解くように微笑んで答える楓。
「そや。例え傷付いてもカッパの膏薬があるからな。その効き目は、今姫様が使ってみて充分わかったやろ?」
桃花も笑って答える。
「駄目よ。カッパって言うと、オガルもの凄く怒るんだから」
すると楓が答え、二人が笑い声に包まれる。
「そうですか、この薬が」
紅蘭麻は改めて、オガルの能力とその薬に感心する。そして笑っている二人を見ている内に、紅蘭麻はかなり安堵する事が出来た。


周りは徐々に薄暗闇に包まれつつあった。空には太陽の替わりに満月が現れ、闇とは対照的に徐々にその輝きを強めつつある。
「お会いする事はない。でも何故か、会ってみたい……」
幻斎が強引に進めた奸計のせいでも、拷問の時に感じた不思議な想いのせいなのかよくわからないが、まだ見ぬ、いや見る事は禁忌である呀宇種の者への思いを、以前より強く感じるようになった紅蘭麻であった。
それは単なる好奇心か、天女の血がそう思わせるのか、今の紅蘭麻にはわかる由もなかった。
【第三回終了 第四回に続く】
Pinpai-TV Pinpai-TVではピンパイアニメの最新作を独占先行配信!
DVDよりも前にチェックできちゃうから、誰よりも先に最新作を見たいキミはチェック!